私の出産体験記~後編~
1人分娩室に残された私。
(…おいおい、このまま1人で産むのか?)
陣痛が来てないときは割と思考がはっきりしていて、周りを見渡す余裕があった。
目の前には機械と点滴、隣の部屋からは男の人と苦しそうな女の人の声、点滴の音…
たまに来る陣痛は本当に脂汗かくくらい痛く、私はエビのように丸まっていた。
ようやく助産師さんが来てくれて、また元の分娩台に足を乗せるスタイルに戻された。
「もうあと少しで生まれますから、一緒にがんばりましょう!」
最近、出産のスタイルが多様化している。
代表的なので言うと痛くないという無痛分娩や計画分娩、
メモリアル出産系だと好きな音楽を流したりアロマを炊けるとこまであるらしい。
私は特にこだわりがなかったので「自然分娩」にした。
バースプランを旦那さんに見せると、
「え?無痛にしないの?なんで?」
「いやなんでって言われても。一生に1度くらいなら経験してもいいかなって。」
「全然理解できない。俺が女なら絶対無痛にする。一生に1度でも痛いのは嫌だ。」
「www夫君らしいね。」
そんなやりとりが走馬灯のように頭をよぎった。
「(…無痛分娩にしとけばよかった)」
こんなに痛いと思ってなかった。本当に自分の決断を後悔していた。
「助産師さん…今から無痛にするのは…無理ですか…」
「何言ってんのよ、無理に決まってるでしょ。このまま産んじゃいなさい」
心底、一生に1度ならとか言ってた自分を殴りたかった。
この産婦人科ではソフロロジーというものを推奨しており、講習にも参加させられた。
ソフロロジーとはイメトレとヨガの呼吸法を組み合わせたようなもの(違うかも)で、
お産への恐怖心を毎日のソフロロジーで取り除き、ゆったりと出産するスタイルだ。
実際、ソフロロジーを実践していた女性の出産動画を講習で見せられた。
「はい息を吸って~~~吐いて~~~~」
「すーーーーーーはーーーーーー」
「はい上手ですよ~~~もう1回」
「すーーーーーーはーーーーーー」
「はい、おめでとうございまーす!産まれましたよ!」
…全然テレビや映画で見る出産と違う。ぎゃーとか、わーとか叫んでない。
妊婦さんも涼しい顔して出産してるし、なんなら笑顔さえ見せている。
ソフロロジーをしっかり行えば、このようにリラックスして産めると教わった。
そして半信半疑でたまにさぼりつつ、私も一応ソフロロジーを夜やってから寝ていた。
(…これはソフロロジーを疑ってた私への罰なのか?あの禿げ気味の院長の呪いか?)
色々なことを後悔しつつ、いよいよ陣痛が本格化してきた。
「ううううううぅぅぅぅーーーーーー痛い痛い痛い痛い」(ほぼ絶叫してたと思う)
「叫ばない!いきんで!はい!」
「あ、旦那さん到着されたみたいですよ」
戦線離脱したおかんが、夫君にメールで連絡しておいてくれたようだった。
おとんも到着しているらしい。
すると受付からスタッフが1人入ってきた。
「旦那さん、立会いするか聞いてるけど、します?」
私は、鬼の形相で首を振った。
元々立会い希望でなかったし、こんな獣姿見られたくないと思った。
正直もうそろそろ無理だと思い始めていた。
「…あと、、あと何回いきんだら生まれますか」
「うーん、あと3回!3回で生まれるからがんばって!」
…
………
………………
「んんんんんんーーーーーーーーーーーー!」
「…産まれた!!!!」
15時に病院に来て5時間のスピード分娩だった。
赤ちゃんを拭いてもらい、カンガルーケアのため抱っこするよう言われた。
(うわぁ…なんかヌルヌルしてるし青いしエイリアンみたいだ)
正直な最初にわが子を見た感想はこれだった。
感動もへったくりもない。
「…どう、どうすればいいですか」
「うつ伏せで胸の位置で抱っこしてあげてください」
娘との初対面だった。
夫君も分娩室に入ってきて、3人で写真を撮ってもらった。
感動とか母になった実感とかそういうのは一切そっちのけで、
とにかく終わった疲れた寝たいという感じだった。
ちなみに退院の日に3人で撮った写真を見た。
…私、顔面蒼白www
貧血起こしていたので顔が本当に青白かった。
夫君は金曜の夜というのに非常にいい顔をしている。
とにかくそんなこんなで、壮大な出産が終わった。